サーバーが海外にあっても日本の特許は及ぶ ドワンゴ v.s. FC2裁判(2022年7月)平成30(ネ)10077
特許4734471号と特許4695583号(表示装置および表示プログラムのクレーム)に対する裁判
●東京地裁2018年9月19日:fc2が提供する表示装置はドワンゴ特許の技術的範囲に属さないため(海外実施の話を議論するまでもなく)非侵害(ドワンゴ敗訴)(関連記事)
●知財高裁2022年7月:地裁の侵害論の結論を覆すと共に、諸事情を考慮して日本国内の実施とみなせるのであれば、一部海外実施でも日本の特許権は及ぶと判示(ドワンゴ勝訴)(関連記事1、関連記事2)
サーバーが海外にあることを大きな理由として日本の特許権が及ばないとした、(2022年)3月のドワンゴ対FC2の特許権侵害訴訟の地裁判決(関連記事1、関連記事2、関連記事3)は特許業界およびネット業界に衝撃を与えました。理屈から言えばそういう解釈になってもしょうがないのですが、実質的には、ネット関連発明で日本でどんなに強力な特許権を取得していても、サーバーを海外におけば回避できると言っているの等しいからです。ついにパンドラの箱が開いてしまったかという印象でした。
しかし、本日付のドワンゴのニュースリリースによると、7月20日付けで「特許発明の実施行為につき、形式的にはその全ての要素が日本国の領域内で完結するものでないとしても、実質的かつ全体的にみて、それが日本国の領域内で行われたと評価し得るものであれば、日本の特許権の効力を及ぼし得ると判断」した知財高裁の判決があったそうです。判決文は現時点ではまだ公開されていません(公開されしだい改めて解説記事を書く予定です)。
注意して頂きたいのですが、この知財高裁判決は、冒頭の地裁判決の控訴審の判決ではありません(そんなに早く控訴審が終わるわけがありません)。
これは、同じドワンゴ対FCによるものですが、2018年に地裁判決が出ていた別の特許権侵害訴訟の控訴審です(関連記事)
特許4734471号と特許4695583号(表示装置および表示プログラムのクレーム)に対する裁判
こちらの訴訟でも当然に海外サーバーでの実施に日本の特許権は及ぶかという点(域外適用)は争点になっていたのですが、充足論の段階において、FC2のシステムの構成がドワンゴの特許権の技術的範囲に属さないという結論が出たため、域外適用について議論するまでもなく、ドワンゴ敗訴という判決になっていました。
今回判決があった控訴審では、ドワンゴはこの充足論の問題と域外適用の問題の2つのハードルを越えられたことになります。 【裁判所】 知的財産高等裁判所
【判決日】 2022年7月20日
平成30(ネ)10077
控訴人 株式会社ドワンゴ
同訴訟代理人弁護士
塩月 秀平
宮川 美津子
根本 浩
高梨 義
濱田 慧
同補佐人弁理士
佐藤 睦
澤井 光一
被控訴人 FC2,INC.
同訴訟代理人弁護士
高橋 淳
同訴訟復代理人弁護士 宮川 利彰
被控訴人 株式会社ホームページシステム
同訴訟代理人弁護士 濱田 佳志
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